
「氷が“ガコン”と落ちる」あの瞬間。
実はあれ、製氷機が壊れている音ではなく、正常な“氷の取り出し工程(離氷/収氷)”です。
この記事では、動画で見える動きとセットで、
- キューブアイス(セル方式)が氷を作る仕組み
- 氷が落ちる直前〜落下までに内部で起きていること
- 1サイクルの目安時間と、遅くなる原因
を、わかりやすく解説します。
動画:氷が落ちてくる瞬間(YouTube)
業務用製氷機(キューブアイス)は「冷たい金属のマス+水噴射」で作る
キューブアイスの代表的な方式(セル方式)では、冷却された製氷室に水を噴射しながら、外側から徐々に凍らせることで透明度の高い氷を作ります。
ポイントは「噴射しながら」凍らせること。水を流動させつつ凍結するため、不純物が中心側へ寄りやすく、結果として氷の透明感につながります(※水質や環境で変動)。
1サイクルで起きていること
キューブアイスの1サイクルは、大きく分けると次の2つです。
① 製氷(フリーズ)工程:水を噴射して凍らせる
- 金属のマス(製氷室/蒸発器側)が冷えている
- ポンプで水を循環・噴射し、徐々に氷が成長する
(外側→内側へ育つイメージ)
② 離氷(ハーベスト)工程:氷を“落とす”ために一瞬あたためる
- 製氷室を瞬時にあたためて離氷させる
- この工程で、動画のように氷が「ストン」と落下します
「氷が落ちる瞬間」内部では何が起きている?
ここが一番おもしろいところです。
キューブアイスは、金属のマスに“張り付く”ように凍っています。
そのままでは落ちないので、離氷工程では 氷と金属の接触面だけをわずかに溶かして滑らせます。
多くの機種では、この離氷工程に ホットガス(高温側の冷媒ガス) を使う制御があり、サービスマニュアル上でも Harvest Cycle(離氷工程)の構成部品に Hot Gas Valve(HGV) が含まれています。
別メーカーのサービスマニュアルでも、デフロスト(離氷側)で hot gas valveが開く記載があります。
1サイクルは何分?目安とブレる理由
下書きでは「1サイクル20〜30分程度」とあり、現場感としてもこのレンジで語られることは多いです。
ただし実際には、水温・外気温・設置環境・機種・汚れ具合で結構ブレます。
参考として、ホシザキのサービスマニュアルでは、工程の目安として
- Harvest Cycle(離氷)平均:3〜5分
- さらに工程構成として WV / HGV / Comp(圧縮機) 等が記載
といった情報が示されています。
また同ページで、凍結側は「freeze timer setting(例:30〜35分)」という上限設定に触れており、一定の範囲で管理されていることがわかります。
サイクルが長くなりやすい条件
- 夏場で厨房温度が高い/換気が弱い
- 凝縮器(コンデンサー)が汚れて放熱できない
- 給水温度が高い
- 水垢(スケール)や汚れで熱交換が落ちている
もし「氷が落ちない/落ち方が変」ならチェックしたいこと
※ここは安全のため、分解や冷媒系の作業は推奨しません。できる範囲の確認だけに絞ります。
目視でできるチェック
- 氷が“角張らず”薄い/形が崩れる(凍結が弱いサイン)
- 氷が張り付いて落ちきらない(離氷が弱い・汚れ・環境要因)
- 製氷時間が明らかに伸びている(以前より遅い)
併せて読むと原因特定が早い
- 凝縮器(アルミフィン)の汚れ → 製氷遅延・負荷増大につながりやすい
- 給水・排水の不具合 → 水供給不足や排水不良が連鎖する
中古の業務用製氷機を買うなら「ここ」を見ると失敗しにくい
キューブアイスは“できる/できない”が分かりやすい反面、内部状態(汚れ・放熱・コンディション)で性能差が出ます。
購入前に見るなら優先順位はこの順がおすすめです。
- 凝縮器(コンデンサー)が詰まっていないか
- 製氷室周りの汚れ・スケール感
- 氷の形(薄い・欠ける・ムラがある等)
- 異音/異常停止の有無
FAQ
Q. 氷の中心の“くぼみ”って不良?
キューブアイスは噴射しながら凍らせる方式のため、中心の小さなくぼみができることがあります(噴射の跡として説明されています)。
Q. 氷が落ちる音が大きくて心配…
落下音自体は正常動作の範囲です。
ただし「以前より極端に大きい」「落ち方が不規則」「氷が割れる」が増えた場合は、汚れ・設置の歪み・環境変化がないか確認すると安心です。
まとめ
- キューブアイスは 冷却された製氷室に水を噴射して凍らせる方式が基本
- 氷が落ちる瞬間は 離氷(ハーベスト)工程で、製氷室を一瞬あたためて氷を剥がしている
- 1サイクル時間は環境で変動し、夏場や放熱不良(凝縮器汚れ等)で遅くなりやすい
気になることがあればお気軽に相談してくださいね。
