
「夏になると氷ができるのが遅い」
「製氷機がずっと回ってる感じがする」
「冷蔵庫の冷えが弱い気がする」
こういった症状、凝縮器(コンデンサー)の汚れが原因になっているケースがよくあります。
凝縮器は、いわば 熱を外に逃がすための“放熱器”。
ここがホコリや油で詰まると、冷却効率が落ちて 機械の負荷が増大し、結果として「製氷が遅い」「冷えない」「電気代が上がる」「故障につながる」…という流れになりやすいんです。
この記事では、
- 冷蔵・製氷機が冷える仕組み(冷凍サイクル)
- 凝縮器(アルミフィン)の役割
- 汚れると起こるトラブル
- フィルター清掃と凝縮器の薬品洗浄の違い
- 中古製氷機を買うときに見るべきポイント
を、現場目線でわかりやすくまとめます。
先に結論:まずは「フィルター」→ その次に「凝縮器(アルミフィン)」
多くの業務用製氷機には、凝縮器の目詰まりを防ぐためのエアフィルターが付いています。実際に取扱説明書でも、エアフィルターが「凝縮器の目づまりを防ぎます」と説明されています。
なので基本の優先順位はこうです。
- フィルター清掃(まずここ)
- それでも改善しない/油汚れ・ベタつきが強い → 凝縮器の薬品洗浄
1. 冷蔵機器は「冷凍サイクル」で冷やしている
冷蔵庫・製氷機・ショーケースなどの冷蔵機器は、ざっくり言うと冷媒(フロン等)を循環させて、熱を移動させています。
基本の流れは以下の4工程です。
- 圧縮(コンプレッサー):冷媒を圧縮して高温・高圧にする
- 凝縮(凝縮器/コンデンサー):外気へ熱を捨て、冷媒を冷やして液体に戻す
- 膨張(膨張弁):圧力を下げて冷媒を一気に冷たくする
- 蒸発(蒸発器):周囲から熱を奪い(=冷やし)、冷媒が気体に戻る
この中で、今回の主役が 「凝縮(=放熱)」を担当する凝縮器です。
2. 凝縮器(コンデンサー)とは?動画にある「アルミのフィン」の部品
あなたの動画に出てくる、薄いアルミの板が何枚も並んだ“フィン”。
これが一般的に 凝縮器(コンデンサー)と呼ばれる部分です。
役割はシンプルで、
- 高温になった冷媒の熱を
- フィン+風(外気)に当てて外へ逃がし
- 冷媒を「次の工程に行ける状態」に戻す
というもの。
つまり、凝縮器が汚れて「熱が捨てられない」状態になると、冷凍サイクル全体が崩れていきます。
3. なぜ凝縮器は汚れる?飲食店の設置環境が直撃する
業務用の製氷機や冷蔵機器は、設置環境によって凝縮器のフィンに汚れが付着しやすいです。
特に多いのがこの3つ。
- ホコリ(床付近の吸気・客席/バックヤードの粉じん)
- 油(揚げ物・炒め物の油煙がベタついて固着)
- 小麦粉・粉もの系(製麺・ベーカリー・粉の保管がある厨房)
「ホコリ+油」は最悪コンボで、表面がベタベタしてホコリがどんどん貼り付く → フィンの隙間が塞がる、という流れになりやすいです。
4. 凝縮器の汚れを放置するとどうなる?(夏に一気に症状が出やすい)
暑い時期は、外気温が高いぶん「放熱」がもともと不利です。
そこに凝縮器の汚れが重なると、さらに放熱できず、冷媒が十分に冷えないまま次工程へ進んでしまい、機械の負荷が上がります。
結果として起こりやすいのが以下です。
- 製氷スピードが遅くなる/氷の出来が不安定
- 運転時間が長くなる(止まりにくい)
- 冷えが弱くなる
- 消費電力が増える(=電気代に跳ねる)
- コンプレッサーや周辺部品に負担(故障リスク)
「冷えないときはエアフィルター・凝縮器の汚れを確認して」という案内は、冷蔵機器のサポートでもよく挙げられるチェックポイントです。
5. まずはここ:凝縮器フィルターの清掃(最重要)
凝縮器の手前にフィルターがあるタイプなら、ここを清掃するだけで改善することも多いです。
清掃頻度の目安として、業務用製氷機の情報では
「凝縮器フィルター:月に2回」が挙げられています。
ホシザキの清掃ガイドでも、エアフィルターは「水または中性洗剤を入れたぬるま湯で洗い、十分に乾かす」など、基本手順が示されています。
ポイント
- 洗剤を使ったらよくすすぐ(洗剤残りはNG)
- 乾かしてから戻す(濡れたままは避ける)
- フィルター無しの運転は故障の原因になるため避ける(注意喚起あり)
6. それでも落ちない汚れは「凝縮器の薬品洗浄」が効く
フィルター清掃で改善しないとき、原因はだいたいこのどちらかです。
- フィルターの奥(=凝縮器本体)がすでに詰まり始めている
- 油汚れが強く、ホコリが固着して 乾拭き・掃除機だけでは落ちない
この「ベタつき・固着」領域に入ると、薬品(コイルクリーナー等)で汚れを浮かせて落とす、いわゆる 薬品洗浄が効いてきます。
なお、コイル洗浄は一般的に「泡タイプの洗浄剤→一定時間置く(dwell)→洗い流す」などの考え方があり、洗浄剤を数分置く(目安5〜10分)といった手順がガイドでも紹介されています。
※ただし製氷機・冷蔵機器は電装部もあるため、実施は慎重に(次項)。
安全面の注意
製氷機の周辺は 電気部品+水が近い環境です。
取扱説明書でも「製品に直接水をかけないこと」などの注意が明記されています。
薬品洗浄を行う場合は、少なくとも以下を守ってください。
- 電源OFF(可能ならコンセントを抜く/ブレーカーOFF)
- ゴーグル・手袋・換気など基本の安全対策
- 電装部に薬品や水がかからない養生
- アルミに不適切な強酸・強アルカリは避ける(機種・洗浄剤の注意書き優先)
- 不安なら無理せず、メーカー・設備業者へ依頼
7. 【動画】IM-25Mの凝縮器 薬品洗浄(アルミフィン洗浄)
文章より、実際の汚れ落ちや手順は動画のほうが早いです。
こちらで、凝縮器(アルミフィン)の薬品洗浄を確認できます。
8. 自分でできる範囲/業者に任せるべき範囲
「どこまで自分でやっていい?」が一番大事なので、線引きをまとめます。
自分でやりやすい(比較的安全)
- 凝縮器フィルターの取り外し洗浄(中性洗剤+すすぎ+乾燥)
- 見える範囲のホコリを掃除機やブラシで除去
(凝縮器フィンのゴミ・ほこりをブラシや掃除機で取る手順例あり)
業者推奨(失敗コストが大きい)
- 油汚れが強い、ベタつきがある → 薬品洗浄が必要
- 高圧洗浄機でやりたくなった(フィン潰れの危険が高い)
- エラーが出ている/動作が不安定
- 電装部周りまで触る必要がある
凝縮器のフィンは薄く、潰すと風が通らず逆効果になることもあるので、力技は避けるのが正解です。
9. 中古の製氷機・冷蔵機器を買うなら「凝縮器がキレイ」を最優先で見る
中古購入時、ここを見落とすと「買ったあとに地獄」になりやすいです。
チェックポイント(購入前に見る)
- フィルターが付いている機種なら、フィルターが目詰まりしていないか
- フィルターの奥のアルミフィンが
- ホコリで真っ白になっていないか
- 油でテカってベタついていないか
- フィンが広範囲に潰れていないか
- 風の通り道(吸気・排気)が塞がれていないか
取扱説明書でも、エアフィルターは「凝縮器の目づまりを防ぐ」部品として位置づけられています。
つまり逆に言えば、ここが汚い=性能低下・負荷増大のリスクが高いと見てOKです。
メーカーに頼むと費用がかかる作業。でも“最初からやってある機械”が安心
凝縮器の薬品洗浄は、メーカー(ホシザキ、ダイワ等)や代理店・業者に依頼すると、内容にもよりますが費用がかかる作業になりがちです(現場感だと2万円前後になることも)。
そのため当店「氷の錬金術師」では、提供する機械について 凝縮器の薬品洗浄を行った状態を基本にしています。
中古は「見た目」よりも、まず 熱交換器(凝縮器)が健康かどうかが本当に重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 薬品洗浄はどれくらいの頻度で必要?
厨房の環境によります。
まずは フィルターを月2回を目安に回し(目安として提示されることがあります)、それでも落ちない汚れや、製氷が遅くなる症状が出たら凝縮器側まで疑うのが現実的です。
Q2. フィルター清掃だけで改善しないのはなぜ?
油汚れが強いと、フィルターの奥のフィンに汚れが固着しやすく、掃除機やブラシだけでは落ちにくいからです。こうなると薬品洗浄が効きます。
Q3. 水をかけて一気に洗い流したい…
取扱説明書でも「製品に直接水をかけない」注意があります。
電装部やサビ、故障リスクがあるため、安易な水かけはおすすめしません。
まとめ:凝縮器がキレイだと、製氷も冷えも安定しやすい
- 冷蔵機器は「圧縮→凝縮→膨張→蒸発」の冷凍サイクルで冷える
- 凝縮器(アルミフィン)は、熱を捨てる超重要パーツ
- 汚れると放熱できず、夏場に「製氷が遅い」「負荷増大」が起きやすい
- まずはフィルター清掃、次に必要なら薬品洗浄
- 中古購入時は「凝縮器がキレイか」を最優先でチェック
気になったらお気軽に相談してくださいね。
